皆さん、こんにちは!
今回は、近年全国各地で発生している道路陥没事故の原因のひとつとして注目されている「路面下空洞」の調査に活用できる、微動アレイ探査についてご紹介します。
道路は、私たちの暮らしに欠かせない身近なインフラですが、その安全性は、普段目にすることのない地下の状態に大きく左右されます。
そこで重要になるのが、道路を掘り返すことなく、地下の異常を把握する調査技術です。
路面下2~3mまでであれば、地中レーダー探査が可能です。しかし、より深い深度の状況を把握しようとすると地中レーダーでは探査することができません。このようなときに微動アレイ探査が有効です。
過去のブログ記事「微動アレイ探査とは?」(リンク)では、微動アレイ探査の基本的な仕組みや、建物の耐震設計への活用についてご紹介しました。
今回はその応用として、道路の下に潜む路面下空洞や地盤の緩みを、どのように捉えるのかを見ていきます。

▼今回の記事はこちら
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(1)路面下空洞調査の基本「微動アレイ探査」
(2)広い範囲を二次元で捉える「チェーンアレイ探査」
(3)チェーンアレイ探査による路面下空洞(緩み域)の調査事例
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(1)路面下空洞調査の基本 ― 微動アレイ探査
地震が発生していないときでも、私たちの足元の地盤は、風や波、交通、工場の稼働などによって、常にわずかに揺れ続けています。
この微小な揺れを「常時微動」と呼びます。
微動アレイ探査は、この常時微動を利用した物理探査手法です。
複数の地震計(例:速度型の微動計など)を、(代表例として)正三角形状などに配置し、常時微動に含まれる「表面波(レイリー波など)」を観測します。
そして、観測データを解析して表面波の伝わり方(周波数ごとの位相速度=分散特性)を推定し、そこから地下の「S波速度構造(Vs構造)」を推定します。
観測データを解析することで、地震計(微動計)を設置した地点の直下について、地盤の硬さ・柔らかさを示す「S波速度構造」を、深さ方向の一次元データとして推定することができます。
路面下空洞や、土砂の流出による地盤の緩みが存在すると、周囲の健全な地盤と比べて、一般にVs(S波速度)が小さくなる(遅くなる)傾向が見られます。
この「速度の違い」を捉えることが、地下に異常(緩み)の可能性があるかどうかを判断する重要な手がかりとなります。
※なお、「低いVs(S波速度)は必ず空洞がある」と断定するというより、まずは「緩み・性状の違いの可能性」を示す情報として捉え、他資料(埋設物情報、既往資料、必要に応じた追加調査など)と総合判断するのが適切と考えています。

(2)広範囲を二次元で探る ― チェーンアレイ探査
微動アレイ探査は、深さ方向の把握に優れた調査手法ですが、道路の下に広がる路面下空洞を把握するためには、点ではなく、面(二次元)での調査が必要になります。
そこで用いられるのが、微動アレイ探査を発展させた「チェーンアレイ探査」です。
チェーンアレイ探査は、正三角形を基本とした配置などを測線方向に連続させて展開していくことで、測線下のVs構造を連続的な二次元断面として把握しやすくする考え方です。
物理探査の分野では、人工的に振動を発生させる起振源を使用する方法もありますが、調査が大掛かりになり市街地などの調査には適していません。
一方、チェーンアレイ探査は、自然に発生している常時微動を利用するため、人工的な起振を必要とせず、地表面に地震計を設置するだけで計測することができます。
自動車の走行などによる交通振動も(条件に応じて)情報として活用できるため、市街地や交通量の多い道路での路面下空洞調査に適した手法といえます。

なお、この微動アレイ探査を用いた空洞調査技術については、動画でもご紹介しています。
実際の調査イメージを知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください。
▼ 「微動アレイ探査を用いた空洞調査技術」動画はこちら
(3)チェーンアレイ探査による路面下空洞(緩み域)の調査事例
ここで、日さくが実施した調査事例をご紹介します。
老朽化した下水道の周辺では、下水管の変形や破損をきっかけに、周囲の土砂が下水管に吸い込まれ、緩み域や空洞が形成されることがあります。
この事例では深度7m付近に埋設されている下水道マンホール周辺を対象にチェーンアレイ探査を実施したところ、Vs(S波速度)が周囲よりも極端に小さい領域が、縦方向に連続する構造として現れました。
この結果から、下水管周辺の地盤が緩んでいる状態を、二次元の断面図として明瞭に把握することができました。
チェーンアレイ探査により、「どの位置で」「どの深さまで」地盤の性状の違い(緩みの可能性)が広がっているのかを、視覚的に確認できる点が大きな特長です。

おわりに
微動アレイ探査・チェーンアレイ探査は、地盤を掘削することなく、目に見えない地下の状態(特にVs(S波速度)=地盤の硬さの目安)を把握できる非破壊調査手法です。
路面下空洞は、発見が遅れると、突然の道路陥没事故につながるおそれがあります。
だからこそ、異常が表面化する前の調査が重要です。
私たちは、長年培ってきた地質調査の技術を活かし、地下の状態を丁寧に読み解くことで、安全・安心な社会インフラの維持に貢献していきます。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 「路面下空洞」とは何ですか?なぜ発生するのですか?
路面下空洞とは、アスファルトなどの道路の直下にできる空洞のことです。
主に、地下に埋設された下水管の老朽化による破損部から、周囲の土砂が地下水とともに下水管に流れ込む(吸い込まれる)ことで発生します。
放置すると、突然の道路陥没事故につながるおそれがある、非常に危険な状態です。
Q2. 市街地の路面下空洞調査に、なぜ微動アレイ探査(チェーンアレイ探査)が向いているのですか?
微動アレイ探査は、自動車の走行や工場の稼働などによる自然な揺れ(常時微動)を利用し、常時微動に含まれる表面波の性質を解析して、地下のVs(S波速度)構造を推定する調査手法です。
人工的に大きな振動を発生させる必要がないため、市街地や交通量の多い道路脇でも、安全かつ効率的に調査を行いやすいという特長があります。
Q3. チェーンアレイ探査では、どのくらいの深さまで調査できますか?
探査深度は、地上に配置する地震計のアレイサイズ(例:アレイ半径、または最大の地震計間隔など)によって調整できます。
一般的な目安として、探査深度はアレイサイズの数倍~10倍程度と説明されることがあります。
なお、チェーンアレイ(正三角形を連続展開するタイプ)の説明として、三角形の1辺の長さの約10倍程度を目安とする考え方もあります。
路面下空洞など浅い層を対象とする場合は、地震計の間隔を1~2m程度と細かく設定し、高精度な調査を行います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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